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高校生世代支援シンポジウム

12月15日、仙台レインボーハウス
「高校生世代支援シンポジウム~高校生世代支援が作る新しい地域の担い手~ キッズドア東北の実践に見る生活困窮世帯の高校生・高校中退の実態と支援成功のポイント」には、40名を超える皆様が来場され、盛会となりました。

“子どもの貧困” “高校生世代支援” と聞いても、あまりピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。
日本では、行政の支援なども義務教育である中学生に集中しがちですが、低所得家庭の高校生は厳しい状況の中で、貧困の連鎖から逃れられないという実態がわかってきました。
通学定期や部活の費用など高校生活にかかる費用をアルバイトで稼がなくてはならないような状況で、アルバイトを多くするせいで成績が下がり、中退の危機に陥ってしまうことがあります。

“高校生世代をどう支援するか” は、日本の未来を支える重大なテーマなのです。

今回のシンポジウムでは、三菱UFJ信託銀行執行役員 フロンティア戦略企画部長の石崎浩二様に、企業の立場からNPOを支援する、社会貢献をする意義についてお話しいただきました。

冒頭、「本来会社とは楽しい場で、自分の夢を実現する場所。一番大事なことは、好きなことを見つけること。自分で決めること。仕事を通じて誰かの役に立つこと。」という言葉が、とても印象に残りました。
来場者の中には、現役の高校生・大学生もいましたので、これから社会に出ていく彼らにとっては、特に心に響いたのではと思います。

内閣府・子供の貧困対策「子供の未来応援プロジェクト」には、錚々たる企業が名を連ねていますが、実際、日本の大企業に勤めるエリートと言われる人々と貧困層の人たちとの間には出会いの場が少なく、子供の貧困問題について知らない方もいらっしゃるそうです。
若い人材にボランティアや支援活動を経験させる、女性の雇用拡大、時短、時差勤務、有給消化などの働き方改革、保育園設立やシニア層の教師派遣など、寄付以外にも 企業ができる支援や社会貢献はたくさんあります。
知っていれば関わり方も変わってくるはずです。子どもの貧困の実態や、若い世代への支援の必要性を、私たちのようなNPOがもっと発信し、より多くの方に知ってもらうことが大切なのだと思いました。

続いては、仙台経済同友会事務局長の川嶋輝彦さんとキッズドア理事長の渡辺由美子を交え、3人によるトークセッションへ。

渡辺からはお二人に、二つの質問をしました。

___  質問1 ___
「大企業で働くエリートの方々が、子供の貧困などの現状を知らないという現実。このギャップをどう埋めていったらいいですか?」

石崎さん・川嶋さん
「今日のこのような機会をつくったり、SNSを利用したりして、地道に情報発信をすることが大切だと思います。」

___  質問2 ___
「キッズドアでは子どもたちに社会の中で自立できるようにと思って支援をしていますが、これからどういう人が企業で求められると思いますか?」

石崎さん
「一芸に秀でた人。好きなことに没頭できる人。失敗を恐れない人。地道に自分の好きなことをやり続けられる人。そういう人が将来花開くと思います。」

川嶋さん
「私がもし経営者だったら、変わった人をとりたいですね。みんなと同じでなくていい、違ってていいんです。それから、変化に敏感な人。時代は変化する。マーケットは広い。ビジネスチャンスはたくさんある。変化に敏感になる、情報を知ることは大切です」

とのことでした。

その後、来場者からの質疑応答では、登壇者の話に熱心に耳を傾けてくれていた高校一年生からこんな質問もありました。

「今アルバイトをしていてみんな同じ時給。一生懸命やっても、まったりしてても同じ。どうやってモチベーションを上げればいいですか?」

石崎さん
「難しい質問だね(笑)」と言いながらも、「要は自分が楽しむこと。働くってことは自分の成長のために働いて、それが誰かのために、自分の成長につながればいいと思います。だから自分も楽しむことが大切かな。」

同じ高校生からもう一つ質問。
「学校と社会っていろんな常識が違う。学校では普通にまかりとおっていることも、社会にでてみたら、先生の方がおかしいんじゃないかと思うことも出てくる。そういう溝は、どう埋めていったらいいですか?」

石崎さん
「自分が正しいと思ったことを正解にしていけばいい。会社にもおかしいルールはある。おかしいと思ったことをおかしいといえることが大切です。」

川嶋さん
「おかしいということをうまく周囲に発信していくことが、大きく変えていく力になる。18歳になったら選挙に行ってください。政治家が何を言っているかしっかり聞いて、この人だったら自分の意見を反映させてくれるという人に投票してください。希望を見失わないで!」

短い時間ではありましたが、非常に濃い 内容のトークセッションとなりました。

 

後半では、キッズドア理事長の渡辺より“高校生支援の重要性”について、キッズドア東北スタッフの對馬より“仙台・南三陸の学習会の取り組み“について発表をしました。

キッズドア東北での高校生世代支援の現場から、学習会に通っていた高校生が大学生になり、今はボランティアとしてキッズドアに戻り活躍しているという事例や、シングルマザーでアルバイトをしながらも看護師を目指し、この夏見事高卒認定試験と正看護学科の推薦入試に合格した事例などを紹介。

ご参加いただいた教員の方からは、「現場で日々考えていることと重なることばかりで、改めて高校生世代支援が必要だと感じた」との感想もいただきました。

最後は、4年間学習会ボランティアをしている大学生と、中学時代から学習会に通いこの春高校を卒業し就職する予定の高校3年生へのインタビューがありました。
実際の若者世代の生の声に、多くの参加者が熱心に耳を傾けていました。

閉会後の交流会では、キッズドアの活動へ寄付のお申し出があったり、その場で募金をしてくださる方々もいました。

日本の子どもの貧困を解決する一番の近道は、今起こっている子どもの貧困の実態や取り組みの情報を、一人でも多くの方々に発信・浸透させていくことです。
今後も今回のシンポジウムのような機会を増やしていければと、思いを新たにしました。

参加してくださった皆様、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!

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