10月29日、ホテルメトロポリタン仙台
東日本大震災を受け、“東北の子どもたちのため”キッズドアが東北で活動を始めてから早8年が経ちました。
これまでの歩みをたくさんの方に知っていただきたいとの想いから、東北初となる「活動報告&交流パーティー」を、10月29日ホテルメトロポリタン仙台にて開催いたしました。
当日は、60名を超えるお客様が来場し、盛会となりました。
はじめに、南三陸町副町長 最知明広様より、ご祝辞をいただいました。
南三陸町では、東日本大震災当時、一日も早く保育所をあけてほしいという希望が多く、保育所再開の手伝いを前面に立ってしてくれていたのがキッズドアだったといいます。
登園してくる子どもたちの笑顔が、復興に向けて頑張る大人たちにとって何よりの勇気となったそうです。
震災から間もなく10年。災害の多い日本で、未来ある子どもたちが決して置き去りにならないような支援が求められている今、キッズドアにはこれからも活動を続けてほしい!とエールを送ってくださいました。
続いて、仙台市議会議員の佐藤わか子様より、ご祝辞をいただいました。
佐藤様は、設立当初からずっとキッズドアを応援してくださっています。
学習支援をし、一生懸命勉強をして高校に進学させることができても、家庭の事情などで中退してしまう子どもがいること、中学生世代だけでなく高校生世代の支援も必要であること、そのために、一人でも多くの方にキッズドアの活動を理解してもらい、キッズドアを応援してほしい!と声を大にして伝えてくださいました。
東北のこれまでの歩みをまとめたムービーをご覧いただいたあとは、理事長の渡辺、東北事業部長の對馬、南三陸町「志翔学舎」運営責任者の岡田より、これまでの活動についてお話をさせていただきました。
▶渡辺からは、「東日本大震災の支援の道のりと子どもの貧困の今」と題し、そもそも“子どもの貧困”とは何なのか。経済的資本(学習支援や生活支援)に加えて、文化的資本、社会的資本を居場所で充足することで子どもの健全な成長・学力向上につながることなどをお話しました。
▶對馬からは、東北の活動について。
普段の学習会の様子や、月に一回のごはんイベント、講師を招いてのトークイベント、秋の芋煮や芸術鑑賞、先日の福島浪江町へのスタディーツアーなどについて、写真をご覧いただきながら紹介しました。
ここ数年、学習会の出席率があがったことや、昨年の高校3年生が全員第一志望の進路に進めたこと、定着率の向上など、ポジティブな変化が続出しることをお伝えしました。
▶岡田からは、宮城県南三陸町 志津川高校内にある学習支援センター「志翔学舎」の活動について。
震災後人口の流出が加速した南三陸町では、高校の入学者も減少。それを危惧し「高校生によりよい学習環境を提供したい」と設立された「志翔学舎」は今年で3年目を迎えます。
学習支援の様子や、高校進学に向けて頑張る生徒の話などを交え、これまでの取り組みや展望についてお話しました。
そして、今回の報告会一番の目玉でもある、卒業生や今通っている高校生のスピーチへ。
▶卒業生 Mさん
甚大な被害のあった南三陸で、当時中学生の彼はキッズドアの学習支援を受けました。スタッフやボランティアの方との関わりを通し、将来地元で復興に携わりたいという目標が明確になったそうです。
キッズドアがきっかけでつながった縁が、自分を成長させてくれ、高校生になってからは、町のためになればと語りべ活動をしたことも。大学生と交流する中で、大学に興味を持つようになり、仙台の大学へ進学。今年、大学を卒業してからは南三陸町に戻り、町の復興のために尽力しています。「これからもキッズドアに関わっていけたら」と話してくれました。
▶卒業生 Iさん
中学3年生の夏から4年間、キッズドア仙台で学習支援を受け、第一志望の高校へ入学。大学に行きたいという気持ちを持ちながらも、家族には相談できず悩んでいましたが、キッズドアの学習会に通いながら、国公立の短大へ進学することができました。
キッズドアで普段出会うことのない大人や学校以外の友達も増え、たくさんの経験をさせてもらい、大きく成長できたといいます。
「キッズドアにいつか恩返しがしたい」と思っていたという彼女は、この春社会人となり、ボランティアとしてキッズドアに戻ってきてくれました。「今教えている子どもたちにも、キッズドアでの出会いや経験を通して、自分の可能性は広がっていくことを伝えていきたい」と話してくれました。
▶現在キッズドアに通う高校生 Kさん
母親と3人の兄との5人暮らしで、震災当時福島で小学校2年生だったKさん。その後仙台市へ移住し、中学3年生からキッズドアの学習会に通うようになりました。家族が多く、自分の勉強机もない環境で、折りたたんだ布団を机にして勉強したこともあったそうです。
高校受験では今の実力で楽に入れる高校を受けるつもりでしたが、キッズドアから背中を押してもらい、苦しい受験勉強を乗り越え、今は高校生となり部活と勉強の両立を目標に頑張っています。
将来は、母親のように、困難な状況でも自分で決断し、最後までやり遂げる強い女性になりたいと思っていること、困っている人の助けになるような仕事に就きたいという夢を語ってくれました。このスピーチをきっかけに自分にけじめをつけ、今の高校に合格させてくれたキッズドアに恥ずかしい姿をみせないように頑張りたいと話してくれました。
三人それぞれが、震災や、家庭の事情など、困難な状況の中、キッズドアと出会い、スタッフやボランティアに背中を押され、力強く前向きに生きている姿がありました。
辛い経験や困難を力に変え、「これからは誰かのためになりたい」と話してくれました。
こんなに嬉しいことはありません。
キッズドアの支援を受けた子どもたちが、様々な経験や人との出会いにより成長し、社会人となり支援をする側になって戻ってきてくれる。そんな素敵な連鎖がここ数年続いています。
キッズドアが今日まで東北での活動を続けてきた意味が、まさにここにあると思うのです。
キッズドアが震災後、東北に入り、まいた種が蕾をつけ、花が咲きはじめました。
キッズドアを巣立った子が、「何かの役に立ちたい」という志を胸に戻って来る場所として、これからもずっと東北で活動を続けていきたいと、覚悟を新たにしました。
終始、参加いただいた皆様のあたたかい眼差しと、優しい空気の中、なごやかに会は進んでいき、第一部が終了。
第二部(交流パーティー)では、『キッズドア応援クラブ会員』のご紹介の後、東洋ワーク株式会社の境孝様に、乾杯の音頭を取っていただきました。
パーティー中、どのテーブルでも、初対面でも皆さん笑顔で談笑されていて、温かい雰囲気に包まれていました。
【ご参加いただいた方からのアンケート】
「子どもたちが成長するきっかけをつくっていただいていることに感謝しています」
「活動の成果が大変素晴らしいです!自分たちの活動を客観的に捉えられていて、次のビジョン・ステージに活かされていくと思います」
「長期間の支援の大切さを痛感しました」
「スタッフが子どもたち一人ひとりをとても良くケアしている点、次は自分が支援する側にまわりたいという卒業生の言葉が印象に残りました」
「皆さん一人一人の発言全てが心にしみました」
「ボランティアはアルバイトとは異なるため、定着率があまり高くないのでは?と不安に思いました。生徒もボランティアも負担なく活動を続けて行けるよう応援しています。機会があれば私もボランティアとして参加させていただきたいと考えています」
「卒業生のスピーチに引き込まれました。今ここで変えられる未来がある!この子たちは宝物だ!未来ある子どもたちに希望を感じました」
「生徒さんのスピーチが全てを物語っておりました。『楽しい場所・居心地の良い場所』という言葉から活動風景が見えてきました」
会場の様子や来場者アンケートを見て、皆様に大変ご満足いただけたようでしたので、ぜひまたこのような会を開催したいと思います。
ご参加いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!